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イラスト詳細

「星を掲げる女」

作者 羽月ステラ
人物 メルランヌ・ヴィーライ
イラスト種別 シングルピンナップクリスマス2021(サイズアップ)
納品日 2021年12月24日

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イラストSS

 ——静寂の満ちる夜だった。人の営みは降り積もった雪が食み、草花を愛でる小鳥の声も、風薫る森の囁きも、こんこんと更ける眠りに身を委ねていた。
 ガラス窓を隔てた室内では暖炉の薪が爆ぜ、熱を孕んだ光が真白いドレスを染めてはやわらかな影を踊らせる。月が零した涙は人形のように整った素肌に映え、首筋へ這わせる以上の装飾は蛇足であると物語った。
 純真無垢な乙女よりも深く豊かな聖女も斯くやの蜂蜜色の淑女が立つ窓辺。掲げた大粒の星は闇を退ける金色を放ち、額縁に飾られた天の河を流れるどの星よりも強く輝く彼女に贈られた道標だ。
 地に伏し、泥に塗れ、血の味を知る獣は空を見た。凍てつく世界でも優雅に舞う雪色の鳥を見たその時、彼女が何を思ったかは師にもわからなかったかもしれない。それでも今、ここにいる淑女は優しさだけでは羽搏かない確かな翼を手に入れたのだ。
 絵画のように完成された美の底に、しなやかで強かな『白鳥』は眠ったまま——なにせ今宵は、誰かが願った争いのない奇跡のひと時なのだから。
 リン、と爪先で弾いた音色に耳を澄ませ、メルランヌ・ヴィーライは小さく小さく微笑んだ。


 ※SS担当者:氷雀

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