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森本 雄二のしもふりによる2人ピンナップクリスマス2021
森本 雄二のしもふりによる2人ピンナップクリスマス2021
イラストSS
星明かりだけが見ていた。
雪明かりだけが知っている。
これは誰もが夢に見るお伽話のような、本当の話。
降り注ぐような、とはよく言ったものだ。きらきらと瞬くそれが星なのか、はたまた雪なのか。こうも視界いっぱいに溢れていては見分けもつかない。
そんな夜を渡る男は蝙蝠羽と真白い袋を背負い、それから小脇には少女まで抱え込んで皮肉る。
「まさか悪魔がサンタの真似事をしようとは……」
上着1枚で聖人めかした彼のぞんざいな扱いを気にかけるふうもなく、曇天色の翼の彼女もまた、赤い衣を身に付けて袋を手にしていたのだが——ポロリ、ポロリ、と宙へ吸い込まれていく箱、箱、箱。丁寧にリボンでラッピングされたそれは紛れもなく、今まさに子供達が待ち望んでいるプレゼントだった。
「まあ! これも配ったって事ね!」
「ところでカレン、その箱の中身はなんだ?」
アクシデントに焦りもせず、いっそどうでもよいとばかりに今更なことを口にする男に、カレン・クルーツォは無邪気に桃色を綻ばせる。
「中身? さあ、愛かしら」
カレンの衣装に揺れるリボンと同じ赤色が翻っては地上へと次々に消える。その蝋燭の火にも似た儚い様を男・森本 雄二は憐れむような、やっぱりどうでもよいような、感情が読めない黒の瞳で見送るのだった。
※SS担当者:氷雀