イラストSS

　シャイネンナハトの夜、輝かんばかりの、この夜に。
　幻想――レガドイルシオンの南部に存在するブラウベルク領、その地でもその夜は、鮮やかな色どりの装飾に彩られ、多くの店が煌々と光を灯してういる。
　その中でもまばゆく輝くツリーの光は、夜の帳さえ掻き消すようだ。
「マルクさん、連れてきていただいてありがとうございます」
　ツリーとそれを見上げる群衆を背に、テラス席にて２人組が言葉を交わしている。
「本日の『視察』も楽しんでもらえましたか？」
「ええ、久しぶりの休日でした。……ふふ」
「どうかしましたか？」
　笑みをこぼしたテレーゼにマルクが問えば。彼女は静かにグリューワインに口を付けてから。
「あの大きなツリーが彩られるのも、私が実権を握ってから、ですから、こんなに近くで見たのは初めてなんです」
　群衆に静かに笑みを浮かべて、そのまま彼女が視線をツリーへ向けた。
「僕で良ければ、また機会があれば『視察』にお誘いします」
「本当ですか？　ふふ、であれば、またお願いしますね」
　友人として、主従として。マルクは嬉しそうに笑った少女に頷いた。


　※SS担当者：春野紅葉