イラストSS

　――貴方の為に慣れない編み物をした。
　本を広げて無我夢中で編んだマフラーは一人で巻くには長すぎて。
　けれど、解いてしまうのは思いを込めた時間も無くなってしまいそうだったから。

「ジュリエット？」
　覗き込んでくるギルバートの瞳が心配そうに揺れる。
　マフラーの入った包みを持ったまま固まってしまったのだから無理も無い。
「えっと……初めての試みなので、編み目がおかしい所があるかもしれませんが」
　包みの中から取りだした白いマフラー。普通のマフラーの二倍ほどの大きさからとても長い事が分かる。
「喜んで下さると嬉しいです……でも、長くなってしまいました」
　不思議そうな顔をするギルバートに恥ずかしくなり視線を落したジュリエット。

　ふわりと髪に掛かる感触に顔を上げた。
「あら？」
「こうすると、丁度良いな」
　お互いを包むように巻かれたマフラーと、手に感じる温もり。
　ギルバートの大きな手がジュリエットの指先へ重ねられ緩く絡んだ。
　こんなに近づかれたら跳ね上がる鼓動がギルバートへ知られてしまう。
　けれど、上気する頬と湿る掌からこの気持ちが伝われば良いのにとジュリエットは銀白の瞳を上げた。

＊SS担当：もみじ