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小金井・正純の冬在によるおまけイラスト
小金井・正純の冬在によるおまけイラスト
イラストSS
真っ暗な闇の中に光が差し込んでいる。
遍く全てを照らす天照が微笑んでいるというのに。
ざぁざぁと、雨の音が繰り返されている。
それ以外何も聞こえなかった。
天高く輝く星々の囁きも。
心揺さぶる誰かの旋律も。
この空間にはどちらも存在しなかった。
何時から降っていたのか分からない雨だけが二人の女性を優しく包んでいる。
濡れた髪の先から雫が頬を伝い落ちていった。
握り合わさった手は固く唇は弧を描いている。
星の巫女は顔を上げて静かに瞳を閉じて。
旋律の修道女は伏し目がちに蒼玉の瞳を瞬かせた。
決して人前で涙を見せない二人だった。
強い女性だ、と言われたこともあった。
その言葉に疑念を抱いたことは無い。
神に仕える自分たちが涙を流せば、迷える誰かを惑わしてしまうから。
大切な誰かが、悲しんでしまうから。
だから、装束とヴェールの内側に包んで覆い隠した。
泣いてはいけないのだと、自分に言い聞かせてきた。
嗚呼、しかし。
この心の中だけでなら。今この時だけなら。
装束もヴェールも脱いで、全てを曝け出す事が許されるのならば――。
零れ落ちたその雫は何処までも澄んでいて、何処までも美しかった。
※SS担当者:白