イラストSS

「あはは……ちょっとくすぐったいです」
　すずなが、言葉通りにくすぐったそうに笑った。僅かに頭を揺らすのを、
「ほら、ダメですよ。もう少し、我慢してください」
　正純はそう言って笑って、すずなの髪に櫛を通した。
　陽光が、障子窓からさしている。冬の気温は肌寒かったが、暖かな日差しは、二人の身体を充分に温めてくれる。もちろん、どこかぽかぽかとした気分になるのは、陽光のおかげだけではないのだが。
「すずなさんの髪は、まとめがいがありますね」
「それって、ぼさぼさだった、って言う事ですか？」
　む、と唸るすずなに、楽しげに正純は笑った。
「違いますよ。綺麗な髪だ、って言う事です」
　優しくすいてあげると、櫛は滑らかに髪を通る。正純も些か羨ましくなるくらいに、綺麗な髪だ。
「はい、終わりましたよ」
「わぁ、ありがとうございます！」
　鏡を覗き込むすずなの表情は、とても素敵なものを見る子供のようでもあった。その感情を表すように、すずなのしっぽがぱたぱたと揺れる。
「あら、こちらの方も梳きます？」
　正純がそういうのへ、すずなは顔を赤くした。
「し、尻尾は良いです！」
　ぐっ、と自分のしっぽを抱きしめるすずなに、正純はくすくすと笑ってみせた。
　
　＊SS担当：洗井落雲