イラストSS

「輝かんばかりのこの夜にィ！」
　ご想像頂きたい。
　自宅の玄関が（鍵をしていたはずなのに）開かれ、顔以外をすっぽりつつむトナカイの着ぐるみをきた男がブリキ製の大型ソリをサーフボードでも持つみたいに肩にかついで現れたさまを。
　そしてその後に起こるであろう事態を。
　ていうか玄関口に郷田 貴道が立っていた時点で想像すべきである。
「HAHAHA!　ビューティー、今宵……サンタクロースになろうぜ！」
「イーーーーーヤーーーーーーー！！」
　過去の思い出（主に山ごもり）が封印したはずの記憶の中から蘇ったのか、ビューティフル・ビューティーが頭を抱えた。
　が、それだけである。
　貴道は『答えは聞いてねえ！』とばかりにビューティー（なにげにサンタクロース風の衣装に着替えていた）をひっつかみソリにのっけると、その場で思い切り走り始めた。
　ソリからのびたベルトを袈裟懸けにし、陸上選手顔負けのスプリントをかける。

　突然だが、ボクサーがパンチを放つために使う筋肉は何か、知っているだろうか。
　その答えはシンプル。『全て』である。つま先の指から表情筋に至るまでその全てを総合し、パンチという動作をあるいは防御を行う。
　故に全身これ武器であり防具であり、時として重機だ。

「ハッピーシャイネンンンンンンンンン！！」
　猛烈に走るトナカイもとい貴道と、ほぼ地面についてないソリへ必死にしがみつくビューティー。
　悲鳴が夜空にこだまして……近所のひとが『今年もか』と呟いた。

担当GM：黒筆墨汁