イラストSS

「ぐ、ぐえー、助けて佐伯先生」
　涙を流しながらもハンカチに刺繍を行う茄子子を操は頬杖を付きながら揶揄うような視線を送っていた。
「助けるべきか？」
「い、いや……それだと市販と同じで……。
　これは……間に合うのか？ㅤもう買おうかな……いやでも手作りの方がいいって聞くし……」
　ぐずぐずと涙を流す茄子子に操は愉快だと更に笑みを深くした。恋する乙女は何時だって難儀なものだ。化学式では解くことの出来ない難問を抱えて苦悶し続ける。
　茄子子が切羽詰まって『宿題をギリギリ提出』状態になりながらクリスマスのプレゼントに刺繍を行って居るのもR.O.Oの世界に長らく閉じ込められていたからだ。練達の責任者の一角としても、そんな茄子子の現状を出来ればサポートしてやりたいと才媛は刺繍を学び、直ぐにレクチャーできるまでに至ったらしい。
「佐伯ぜんぜぇ……」
「そう呼ばれると愉快だな」
　助けて、佐伯先生！
　そんな叫び声を上げながら、自分でやりきりたいのが乙女の心――楊枝 茄子子、一人でやりきります！


　　＊SS担当：夏あかね