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純恋のあさぎあきらによる2人ピンナップクリスマス2021
イラストSS
菫の花が咲いている。見渡す限りずっとそれだけしかないのではと思えるほど、差し込む太陽の光は地平を紫とオレンジに照らしている。
花の香りによせられた蝶が飛ぶのを見て、ふと純恋はすこしだけ前の出来事を思い出していた。
世界の未来と、平和と、そして誰かの愛を賭けて戦った一夜のこと。
黒い涙を流す仮面ごしに、『失敗した自分』と向き合った夜のこと。
あの日掲げた理想は、あるいは想いは、彼女へ本当に届いたのだろうか。
掲げた指に、紫の蝶がとまる。
菫の花が並んでいる。少し先には緑の草が生い茂り、花はここまでだと言わんばかりにそよ風が草をゆらしさらさらという歌をうたっていた。
花の香りを独占しようとするかのように集まる蝶を見て、ふと澄恋は少しだけ前のことを思い出していた。
世界の過去と、戦争と、そして誰かの夢を賭けて戦った一夜のこと。
鬼を摸した仮面ごしに、『失敗した自分』と壊し合った夜のこと。
あの日かかげた夢は、あるいは愛情は、彼女へ本当に届いたのだろうか。
掲げた指に、白の蝶がとまる。
さくり、と草を踏んで現れたもう一人を、澄恋と純恋が振り返った。
立っていたのは、黒い喪服を着た女だ。『自分』によく似ていて、そしてだからこそ不安だった。
無言のまま伸ばした手を、喪服の彼女――処恋がとる。
ひとはきっと、失敗をする。
生きていれば、続けていけば、どこかで転ぶことがある。
けれどそんなとき、自分を自分が愛せたなら。自分で自分を許せたなら。
きっとまた、前に進んでいけるだろう。
これはその証明なのだろうか。
それとも、憐憫なのだろうか。
いずれにせよ。
「ありがとう」
その気持ちは、真実に違いなかった。
担当GM:黒筆墨汁