イラスト詳細
カノンの傾 千悠によるおまけイラスト
カノンの傾 千悠によるおまけイラスト
イラストSS
ウォオオォオン……。
吹雪の合間から、獣の遠吠えが聞こえる。四方八方から。それは折り重なっていく。
黒い狼が何十体もの群れを成し、壱狐とカノンを取り囲んでいた。
シャイネン・ナハトを、聖なる休戦の日を前にして――、さいごの一暴れで腹を満たす心づもりであるのだろう。
狼はうごめき、『隙』を狙っている。だが、もうすでに何体もの仲間が斬り伏せられている。魔物は、相対する二人が容易な相手でないことは骨身にしみて理解していた。
「どういたしますか」
壱狐がカノンの様子を見るのに、振り返る必要はない。ずいぶんとともに戦ってきたのだ。手に取るように呼吸が、考えが分かる。
「強敵、です――が、“私達”であれば問題はありません――」
「では」
「ええ」
――月閃。
暴走し溢れる魔力。
カノンは、刀へと変じる壱狐を構えて振りぬいた。
「いざいざ、この力を使うからには負けは許されませんからね──!」
壱狐はカノンへと全ての力を委ね、そしてカノンは刀を振るう。
どうしてほしいのか、どう使うべきか。目の前は開けている。
二人の一太刀は、美しく宵闇を切り裂いた。声をあげることもなく、魔物たちは消滅していった。
※SS担当者:布川