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ガブリエル・ロウ・バルツァーレクのあやひによるシングルピンナップクリスマス2021
ガブリエル・ロウ・バルツァーレクのあやひによるシングルピンナップクリスマス2021
イラストSS
幻想。遊楽伯爵の邸宅は、輝かしい灯りに包まれていた。
例年の通りに開かれている盛大なパーティである。
どこを見ても美しい邸宅は、煌びやかなる気配に包まれていた――が。
「……ふぅ」
遊楽伯爵と謳われるガブリエルの顔には、どこか陰があった。
多くの貴族たちが挨拶に来る――それはいい。
だが。ガブリエルにとって『最も会いたい者』の姿がなかったのだ。
「体調不良との事であれば、仕方ありませんね」
それは。修道院に住まう、とあるシスターの事……
彼女に、傍にいてほしかった。
シャイネンナハトのこの夜に。貴女と共に時を過ごしたかった。
立場が故に、一定の個人を近くに置くことは軽々には許されぬが。
それでも――
「……些か、疲れましたね」
吐息一つ。ワイングラスを指先に抱きながら窓辺へと。
外の空気が彼の首筋を撫ぜ……あぁ。
――貴女は今、どんな世界を見ていますか。
彼の右の手首に備えられしロザリオが、微かに揺れる。
――空には美しい月が浮かんでいます。
この星雫の中に佇む存在を、貴女も知ってくれていますか。
……彼は見据える。天を。その喉奥に、秘めた言葉を胸中に渦巻かせながら。
輝かんばかりのこの夜に――
貴女と共に在りたかったと、願いながら。