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小金井・正純のしもふりによるおまけイラスト
小金井・正純のしもふりによるおまけイラスト
イラストSS
肌寒い冬の空気が障子の向こうに感じられる。
火鉢の置かれた遮那の執務室は程よい温度に保たれ、橙色の夕陽が優しく差し込んでいた。
正純は机の上に突っ伏して寝ている遮那に視線を送る。
もうすぐ迫る年の瀬の忙しさは、机の上の書類の量に比例していた。
遮那はまだ十五歳。
この国では元服ではあるけれど、まだまだ子供の域を出ない年齢だ。
そんな遮那の肩にのし掛る重圧を正純は傍で見守ると約束した。
最初は自分自身が背負った罪と制約であったけれど。
共に過ごして行く日々の中、遮那という一人の少年の成長に喜びを感じるようになった。
移ろいゆく時間は確実に進んでいて、いつか必ず終わりがくると『知って』いるから。
今だけは、その背に羽織を掛ける事を許してほしい。
遮那の黒い翼を覆うように正純は羽織を掛ける。
起こさぬようゆっくりと。
ふと、視線を上げれば机の上に花が飾られているのが見えた。
見覚えのある花だ。
燃える様な赤い色を正純はじっと見つめる。
過った夏の夢は肌を這う寒さに任せ思考の隅に押しやった。
溜息一つ吐いた正純は憂う瞳を僅かに伏せる。
障子越しに差し込んだ夕陽に九重葛の花が揺れて――
*SS担当:もみじ