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沁入 礼拝のやむむによるおまけイラスト
沁入 礼拝のやむむによるおまけイラスト
イラストSS
●寂寥の窓際
雪が降り積もっていた。
夜の闇を覆う灰色の雲が広がり、そこからはそれでもなお町を白く染めようとするかのように、未だ雪がしんしんと降っていく。
窓際にあるベッドの上で、シーツを身体に巻いて。礼拝は一人で窓の向こうを眺めている。寒いかと言われれば寒いが、そんなことは今は気にしないようにして。
『仕事』はすでに終えていて。客はもう帰っている。今はただ一人で全てを忘れるように。
「もっと降り積もるでしょうか」
かなり雪の積もった外を歩く人影はなく。皆、それぞれの家々で家族や恋人、友人達と聖夜を楽しんでいるのだろう。そんな風景が点々と灯る窓明かりから窺い知れる。
どうして私はここでこうしているのだろう。
仕事だと言ってしまえばそれまで。それでも何か違った現在があったのかもしれないと思うこともある。もしかしたら、今頃誰かと楽しく笑い合っていた情況があったのかもしれない、と。
それを確かめるすべはなく。無情に『現在』が横たわるだけ。
「さびしい……」
ここでは一人だ。ここにいるのは仕事のためで。あの窓明かりの向こうの喧騒に、ほんの少しだけ羨望を抱いて。
礼拝は窓の向こうをずっと見つめていた。
*SS担当者:灯火NM