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ゼファーのやむむによる関係者1人+PCピンナップ(縦)クリスマス2020
ゼファーのやむむによる関係者1人+PCピンナップ(縦)クリスマス2020
イラストSS
お爺ちゃん! 雪だよ、雪!」
「今夜は特に冷えると思ったが。そうか、雪が降っておったか」
宿の窓から身を乗り出して空から降る白い粒を指出すゼファーに茶の準備をしていた風月は微笑んだ。
「冷たいね」
「そうだな」
雪に釘付けになり、いつまで経っても窓から離れようとしないゼファーに仕方の無い奴だと風月も腰を上げゼファーの隣に立った。同じように見上げてみれば冷えた冬の空気が心地よかった。
空から舞い降りる雪は穢れを知らぬ真白で、地に落ちては既に積もっていた雪に混ざって見えなくなっていく。
戯れに手を伸ばせば体温ですぐに溶けていまう姿がどうしようもなく儚く思えた。
嘗ての自分では雪を憐れむなど在り得なかっただろう。
だが、ゼファーを気まぐれに拾い、育ててからというもの『人』としての温かみがにじみ出る頻度が増えたような気がする。そして風月は何を可笑しな事をと自嘲した。
ゼファーに袖を引かれ、沈んでいた意識が引き戻される。
寒さで頬から鼻の天辺まで朱く染まったゼファーは無邪気に言葉を紡いだ。
「きれいだね、おじいちゃん」
「……ああ」
――これは間違いなく幸せだった過去の噺。
二人が共に在れた過去の噺。
*SS担当者:白NM