イラストSS

●パーティのその後で
「お嬢様、あんな風にからかって――酷いですよ」
　レジーナ・カームバンクルにそんな表情をさせるのは恐らくはリーゼロッテ・アーベントロートをおいて他にいないだろう。実際の所、初見から受けるイメージより随分と『親しみやすい性格』をした彼女には違いないのだが、些か根深い男性不信と一途さは彼女の可愛らしさを享受できる人物を幻想の蒼薔薇に絞っているからだ。
「……あんなパーティ退屈なだけですもの。
　清々しますわ。袖にされた彼の滑稽な事といったら！」
「むぅ」と唸ったレジーナは愉快そうに鈴の銀音を鳴らしたリーゼロッテの言葉が嬉しいような複雑なような、何とも言えない面持ちだった。
　至高の蒼薔薇が有象無象を相手にしないのは良い。当然だ。しかしながら『からかう対象に明らかに自分が入っているのは頂けない』。
　嗜虐的なお嬢様の『恋愛機能』を疑うのはレジーナが自分にかけた自縄自縛の呪いのようである。
「……さて、レナさん」
「はい？」
『二人きりの時の愛称』で自分を呼んだお嬢様にレジーナの表情が緩んだ。こういう時彼女は『とてもいいこと』か『その逆』かを言い出すのだが――
「プレゼント交換をいたしましょう。
　ふふ、退屈なパーティの口直しですわ。
　とっても女の子らしいでしょう――？」
　――今日は『当たり』の日のようで。レジーナは淡く笑って意地悪なお嬢様の素敵な提案に頷いた。