イラスト詳細
【Scheinen Nacht2020】喫茶店に友人が遊びに来てくれて
【Scheinen Nacht2020】喫茶店に友人が遊びに来てくれて
イラストSS
●
もうすぐシャイネンナハトというある日の午後、依頼を受けたマリア・レイシスはサラにいた。
マリアは『Mughamara』と書かれた看板が立てかけられている店の前で足を止めて、マントから砂を払い落し、ドアを開けた。カランコロン、と鈍い音がドアの上の方から聞こえる。昔はもっと澄んだ音色を奏でていたのかもしれない。たぶん、ベルにうっすらとついた砂が音を鈍らせているのだろう。それほど長く、店が続いている証拠だ。
白薔薇が飾られた店内をみまわすと、八割方テーブルが客で埋まっていた。
あら、と心地の良い声がした。
「マリアさんがラサに来てるなんて珍しいわね、ゆっくりしていって!」
この店を経営するエルス・ティーネだ。
「ふふ! 噂には聞いていたけど、立派なお店じゃないか! お言葉に甘えてゆっくりさせてもらうね!」
エルスに案内されて窓際の丸テーブルに腰を落ち着ける。目の前にメニューが差し出された。それをそっと押し返す。
「エルス君『お勧め』のお茶をお願い」
「じゃあ、とっておきのお茶を入れてくるわね。ちょっと待ってて」
残念ながら、雪は降っていない。かわりに大きな砂粒が、時折ばらばらと窓ガラスを打つ。時間がゆったりと流れる砂漠の喫茶店で、その日を過ごすのも悪くない。
*SS担当者:そうすけGM