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オーガスト・ステラ・シャーリーの此海 ねずみによる2人ピンナップクリスマス2020(横)
オーガスト・ステラ・シャーリーの此海 ねずみによる2人ピンナップクリスマス2020(横)
イラストSS
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「雪、途切れましたね」
それまで黙って歩いていたオーガストが辺りを見回しながら言った。
空の気まぐれか、分厚くのしかかる雲が切れ、月が煌々と照る中、風花が冷えた空気の中を浮遊する。すぐそこまで別の雲が差し掛かっているから束の間の月夜だ。
町から少しばかり離れた森に向かう道中、サクサクと積もったばかりの雪に足跡をつけながら二人して並んで歩いている。
「特に障る気配もないが――」
クライムがそう告げる。オーガストが目をやっている方に獣やモンスターの気配はしない。
「いえ、けっこう明るいものだな。と――」
月明りとオーガストのランタンの灯を辺りの雪が反射して辺りはぼんやりと光っている。
「そろそろ戻るか」
特に目的のある道行きでもない。単に冬の空気に誘われて、二人で黙りこくったまま歩いているだけだ。
「――――」
お互い話そうと思えば話題がない訳でもないが、それは今でなくともいい。
言葉を交わすことも大事なことだが、そうしなくてもいい相手とそうしなくていい時と場所がそろうことは貴重なことだ。
「――もう少し歩きましょうか」
だからもう少し、サクサクと新雪を踏む音だけを楽しもう。
*SS担当者:田奈アガサGM