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カルネ君と観覧車
カルネ君と観覧車
イラストSS
――ねえ、あそこから見た景色はどんな風かな。
高さにして最大115メートル。混沌世界に生きていれば、ましてローレットで活動していれば簡単に体験できる、さして珍しくもない高度だ。
首に毛糸のマフラーを巻いたカルネ(p3n000010)がそんなことを尋ねてきた時に、燈堂 廻(p3n000160)はなんと応えるべきかわからなかった。
そもそも彼から『一緒に遊びに行こうよ』と誘われた時から、なんと応えるべきだったのか。
希望ヶ浜で『後片付け』をして、生命を抜かれたり貰ったりする日々。
日の当たる人々に笑顔で接し、影に隠れて表情を消す。そんな毎日。
それが切り替わったのは、いつからだったろうか。
校長が突然『ローレットをまるごと雇おう』と言い出した時だろうか。それとも特待生としてやってきた彼らが廻に優しく触れるようになった時からだろうか。
影に隠れた廻の、きっと冷たいままだったはずの部分が、まるで胸に手のひらをそっと当てられたように……。
「廻、見て見て、次のゴンドラが来たよ!」
まわる観覧車。長い行列。ひと組ずつ乗り込んでいく家族連れやカップルたち。
おりてくるゴンドラを指さして、カルネはつま先立ちになって踵を上げたり下げたりしていた。
ハッとする廻の手を、カルネがつかむ。
「ねえ、あそこから見た景色はどんな風かな」
観覧車に乗ったのなんて、いついらいだろうか。
けれど。
少なくとも。
「きっと、見たこともない風景だよ」
※担当GM『黒筆墨汁』