イラストSS

●スチールグラードにて
「『皇帝』の仕事って知ってるか？」
　やぶからぼうに向けられたヴェルス・ヴェルク・ヴェンゲルズ(p3n000076)からの問いにヨハン＝レーム(p3p001117)は首を傾げた。
「……一言二言で説明出来るような内容ですか？」
　君主制を敷くゼシュテル鉄帝国において『皇帝』――即ちこのヴェルスは絶対的な権力者であり、象徴である。その仕事は恐らく多岐に渡る筈であり、ヨハンは何の気無しの回答で語り尽くせるようなものであるとは思わなかった。
「他所は兎も角、ウチは結構説明出来る」
「うーん」と思案するヨハンがヴェルスの警邏に同道したのは成り行きである。そんな彼の様子に笑い声を上げたヴェルスは道行く通行人、露天の商人に手を挙げて応えている。自他共に認める人気者だ。
「ウチの皇帝の仕事は概ね一つだ」
「一つ」
「そう。それは『不安にさせないこと』」
「ゼシュテルは寒いからな」とヴェルスはヨハンの頭に手を置いた。
　戦争も、人柄も、個の強さも。
　縋らねば凍えてしまうような土地だから求め、欲するのか。
　ヴェルスの言葉の真意は分からなかったが、ヨハンは何となくそんな風に考えた。