PandoraPartyProject

イラスト詳細

【107】蒼銀のシネマ

作者 綾瀬 みゆき
人物 新田 寛治
ドラマ・ゲツク
イラスト種別 2人ピンナップクリスマス2020(→おまけイラスト)(サイズアップ)
登録されているアルバム
納品日 2020年12月24日

10  

イラストSS

 解き煩うほどの釦も紐も無いというのに、彼女の肢体に囚われたマントは散ることを知らない。それどころか白皙を撫でたがり、透ける肌膚の温度を知りたがる。感情なぞ篭るはずのない布が、意思をもって彼女をくるもうとしているようで。
 鮮やかな色彩の無い月夜に、その赤は目映いぐらいに、強い。
 だが彼女は赤をよそに、漂う空気の視線を、凍てつく星の眼差しさえも吸い寄せた。夜灯りを帯びた四肢が微かにでも動けば、マントや流れる白銀がさわさわと歌う。赤に触れられぬ部位の招きとは別に、秘された幕の向こう側では陰影が映る。見た者にふっくらした肉付きを想起させ、心を惑わす。そしてかの柔肌を守る布一枚、紐一つに嫉妬してしまう。それらのかたちが、彼女の香を飾り立てるものだから尚更。
 けれど譬え誰かが手を伸ばそうとしたところで、浮世より離れた美に触れることは叶わない。月に手が届かぬのと同じく。
 だから夜気は、沈黙を美酒のように飲み干す。
 冴えた夜が酔うのに気付き、彼女が振り返れば――蒼銀が波打ち、まじろいだ後に見える『赤』の虜となるだけだ。


 ――Produced by PPP, Ltd


 *SS担当者:棟方ろかGM

PAGETOPPAGEBOTTOM