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オライオンのみっくによるシングルピンナップクリスマス2020(横)
オライオンのみっくによるシングルピンナップクリスマス2020(横)
イラストSS
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世界はまだこの男に何を贈るか折り合いをつけられないでいる。
かつて男――オライオン――がいた世界でかつてのままで居られていたのなら、この聖なる夜は人々に神の愛を説き、心づくしの食卓を妻子と感謝の祈りと共に味わい、このための贈り物を用意したことだろう。
もはや、彼の願いは遠く隔てられた世界の果てで相打ちにまで持ち込んだ怨敵の留めきれなかった息の根を今度こそ確実に止めることだけなのだ。
やり遂げられなかったふうんともう一度そこに至るまでの長い長い道程をそれでもオライオンは歩き続けようとしている。
世界は辛うじて男の罪を冠にしてその頭に乗せた。聖者の技を使いながら、心のどこにも神などいない。あるいは、進行に身を捧げた神父の身で復讐に走っている自分さえも信じられないのかもしれない。
今、男は孤独と憎悪と復讐で出来ている。かつては確かにあったものがなくなった場所が、そこにないと訴える。
世界は、まだこの男に贈り物を贈れない。
勝手に隙間を埋めないことこそ、今は男に対する最大の贈り物であるようだった。
*SS担当者:田奈アガサGM