イラストSS

「ほ、骨が折れたぞ……」
　幻想王都の程近く、ラドクリフ通りをとぼとぼと歩くルーチェ。この混沌に召喚され初めてのシャイネンナハト、魔王たる彼女は――先程まで所謂「ミニスカサンタ」の格好をしていた。
（まさか余が子供の手を取り喜ばれるなど――不思議なものよ）
　転んだ子供の手を取り「ありがとう」と笑われて。こんなにも寒い夜のはずが、何処か胸の辺りが暖かいのは、何故だろうか。仕事を終え普段着に着替え、ルーチェは通りに並ぶ露店を眺める。ホットワインに、歩きながら食べられるチキンに。何か食べようかと思っていると――どん、と前を行く背中に鼻をぶつける。
「おい貴様、急に立ち止まるでない――ん？」
　見上げてみれば、そこには背丈の何倍もあるツリーがきらめいていて。歩き回る内に、通りの中心にあるルミネル広場へと辿り着いていたのだ。
「これは……中々のものだな」
　頂に灯る星を見上げ、その横にも沢山の星が瞬いている事に目を止める。ツリーに背を向け夜空へと目をやると、そこには満天の星空が広がっていた。
「ふん。この世界の星空も、捨てたものではないな」
　口ではそう言いながらも、その星空からしばし目が離せないルーチェであった。


　＊SS担当者：飯酒盃おさけNM