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雪…。もうそんな季節か…。
雪…。もうそんな季節か…。
イラストSS
雪の結晶を遊ばせる袖口は、白手袋に包まれた指先で遊んだ雪花を受け止めて。
赫々たる焔の如く、揺れ動いた真紅の髪は淡い白雪が柔らかに降り積もった。
鉄帝国の凍える冬の中でマリアは冬支度をして景色を茫と眺め続ける。
寒さで赤らんだ頬に吐き出す白い吐息。鼻先さえも真っ赤に染まればふるりと肩を震わせてマフラーの中にちょこりと頬を隠してみせる。
そんな寒さも忘れるように、降る雪は優しくて。綿雪のように降り積るそれはこの国を直ぐに覆い尽くしてしまう白魔となるだろう。
「雪、綺麗……」
呟けば、その景色の似合う愛しい人の姿がぼんやりと浮かぶ。
此の日常の儚い風景を、共に見られたならば。
屹度、彼女は微笑んでくれるだろう。「凄い」と手を引いて、走り出していくだろうか。
365日、毎日の在り来たりな日常と、その有り触れた毎日を共に過ごしたいと願う人が居ることをさいわいと感じれば寒さも忘れるように胸がじんわりと暖かさを感じて。
何気なく、浮かんだその光景にふうと息を吐き出して。白雪の中をゆっくりと進む。
凍える様な寒い日も、陽差す暖かな日も、君となら屹度。
何にも変えられないほどに素晴らしい物ばかりに為る筈だから――
*SS担当者:日下部あやめGM