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メルナの瀬川るなによるシングルピンナップクリスマス2020(縦)
メルナの瀬川るなによるシングルピンナップクリスマス2020(縦)
イラストSS
世界が白に染まる夜。平和と静謐を誰もが望むその夜に、メルナは街の外を1人歩いていた。
誰かに会うためでもなく、何処かに行くためでもなく、冬の道を歩調も変えずに淡々と。
喧騒はとうの昔に遠くに過ぎ去り、響くのは雪の降る音、雪を踏む音、呼吸音、ただそれだけ。
風は凪ぎ、寒さも幾分か和らいだように思える空の下、メルナはふと空を見上げた。
(今年も、『今日』を迎えられた)
争いの無い、冬の日。シャイネン・ナハトのその夜だけは、戦いのことを忘れられる。
今日この日まで、大きな争いは幾つもあって。
そのたび、自分は「兄」の代わりとして戦ってきた。
だけど、果たして。自分は兄のように戦えただろうか? 兄はもっと上手にやれたのではないか?
戦うたびに思い悩み、彼女は己の手をじっと見る。黒い手袋に覆われたそこに、白い雪が一片。
じわりと解けていく様は、まるで自分の中にある兄との記憶が「そう」なるかの暗喩のように、メルナには思えた。
そんなことはないと、分かっているのに。
混沌で積み上げてきた日々が、自らの過去を押しつぶし、押し流していくような。
さながら、今まさに降り積もる雪がこの世界を白く染めていくように。
「……私は」
果たして、兄の代わりとして勤め上げられるのか?
続く言葉は寒空に白く溶け、その喉を響かせない。ただ、今はゆっくりとこの静寂とともに。
*SS担当者:ふみのGM