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ゼグルド ダルゲンの黑虎によるおまけイラスト
ゼグルド ダルゲンの黑虎によるおまけイラスト
イラストSS
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「……こりゃぁ脈無しかぁな」
呟いたのは、『出張』と言う形で失せモノ探しを請け負うべく、街中を歩くゼグルドの姿。
営業も兼ねて街に繰り出した彼であったが、結果はあまり揮わず。仕方あるまいと帰路へ就こうとした彼に、しかし。
「……おおかみさん?」
くいくいと、自分の服の裾を引っ張る感触。
ジャッカルなんだがなあ、と思いながらも視線を遣った方向には、貯金箱を抱えた小さな子供の姿。
「どうしたぁんだい? 何か落としぃモノかな」
「……うさぎさん」
子供が指さした先には、ゼグルドが営業の傍ら、落ちていた私物らしきものを詰め込んだ箱――その中に在る兎のぬいぐるみだった。
「おかあさんがね。『さいごに』つくってくれたの」
「そうかい。そりゃあ、見つかってよかったぁな」
口ぶりからして、それがその子にとって大切なものであろうことは容易に想像できる。
存外ずっしりとした重さの貯金箱を受け取ったゼグルドは、その蓋を開けて貨幣を一枚取り出し――残りを子供に返した。
「……もう、失くしちゃぁ駄目だからぁな?」
やんわりと頭を撫でて、ゼグルドはその場を後にする。
……町を練り歩いて、得られた収穫はコインが一枚。
それでも、帰るゼグルドの表情は笑顔のままであった。
*SS担当者:田辺正彦GM