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【SN2020】ここにいる。/伊砂IL
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イラストSS
●柔雪
静かに降る雪が冷たい本日、鍋日和。何はなくともネギに白菜は必須だろう。他には茸に豆腐、お肉も入れたいところ。買い物を終えて足取り軽く家へと向かう蜻蛉と縁。
「こないして雪の中、一緒に歩けるやなんて……夢みたいやわ」
「猫はこたつで丸くなるんじゃねぇのかい?」
「ま。唯の猫に見えはるん?」
「悪い悪い、冗談だ」
蜻蛉の悪戯っぽい笑みに縁は観念したように視線を横へ、重なりあう目と目。流石太夫だったというだけあり、ひとの心を弄ぶのが上手い。
さくさくと積もったばかりの雪を踏みしめ、二人、朱の相合傘で辿る帰路は、何だかずっと続けば良いのにと思うような不思議な気分にさせる。いやしかし、早く暖まりたいのも事実。
縁の腕にするりと絡む蜻蛉の腕。きゅっと力を込めれば、互いの熱が行き来する。普段より近い距離に落ち着かない様子で改めて前をむく縁を、蜻蛉は楽しげに眺めていた。いつもは涼やかな縁の、ほんのり赤らむ頬は寒さのせいか、或いは。
「今日は寒いよって、熱燗にしよか」
「……あぁ、そいつはいいな。ついでにシメは雑炊といこうや」
お腹いっぱいになるまで食べて、ぬくぬくしながら過ごす今夜は、屹度特別な日となるだろう――。
*SS担当者:まなづる牡丹NM