イラストSS

　――冬。真冬。
　まるで今日この日を祝福するかの様に太陽は輝いている。
　街の喧騒が、祭りの喧騒がこの軒下からでも伺える。
　それもその筈。今日は聖なりし夜。輝かしき夜と呼ばれし冬季最大の祭典。
　誰も彼もが笑顔で道を往き、きっとこの日には何者の苦しみすらないのだと確信できる程の活気に満ち溢れていた。

「良い日っすねー……ずっとこんな日が続けばいいんすけどね」

　思わず心中をそのまま呟く。
　が、勿論そんな訳がない。ある筈がない。
　アルヤンは、こう見えて確かな実力を持つイレギュラーズだ。
　この混沌世界において、一時の平和を手に入れる為にどれだけの戦いが日夜行われているのか知っている。
　だからこそ尚思うのだ。この平穏な時が続けば良いと。続いて欲しいと。
　それは叶わぬ願いだ。少なくともそう簡単には行かないだろう、と自分自身も思えない程の。

　だけども。

「折角おしゃれしたんだから、自分も楽しみたいすねー……先輩達と一緒に自分も祭りに繰り出すとするっすかねー？」

　今日くらいは。
　今日くらいは、今日この日を全力で楽しんだって誰にも怒られはしないだろう。
　きっと怒るかもしれない偉い人だって楽しんでいるに違いない。

　――輝かんばかりの今日と言う日に、祝福を。　


　＊SS担当者：黒矢NM