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かまくらクリスマス
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しこたま雪が降ったあとのシャイネン・ナハトだった。
それはイルミネーションで煌びやかにライトアップされた街中でもなければ、木々が並んで人通りも少なく、薄暗い街道の外れ。楽しそうな声が聞こえてきたのはそこからである。
「よーっし……これで中に入れるぞ!」
「やっと完成、なのっ!」
大きなスコップで大量の雪を運び出したランドウェラ=ロード=ロウスと瑪瑙 葉月、ギルド『黒夢の影』の面々は雪かきをしていたのだろうか?
——いいえ、彼らはただ雪かきをしているわけではなかった。
「すごい、本当に家みたいになった……崩れないの、かな?」
白くて可愛らしいウサ耳フードをかぶったノア・マクレシアは、出来上がった大きな雪の山を軽く叩いて目を丸くしている。
「雪の中、なのに、あったか! 不思議……!」
そんな雪の山の中は空洞になっているらしく、入り口からシュテルンが顔を覗かせた。
そう、黒夢の影の面々が作っていたのは、人が入れるほど大きな雪の家、“かまくら”だ。
「ん、少し眠くなってきた……」
いつの間に中へ入って丸くなっていた媒 白日は、かまくら作りに少し疲れてしまったのと、意外と暖かいその空間に眠くなり、コクリコクリと首を揺らしていた。
「なかなか大変だったが、作った甲斐があったな」
ギルドメンバー全員が喜んでいる様子に、一番働いていたランドウェラは小さく呟いた。
仲間の飛びっきりの笑顔を見れば、自然と頬も緩んでしまう。
夜空の星が輝き、しんしんと蒼い月光に照らされた美しい雪景色の中、まるで流れ星が降るように風花が舞い降りた。
「雪……降ってきたね。この大きさなら、全員入れそう……かな?」
ノアがそう言いながら入り口を覗き込めば、シュテルンは皆が入れるように奥の方へ移動する。続くようにノアと葉月はかまくらの中へ——そして、一同はランドウェラを見た。
「ランドウェラ、いっしょ、入ろ……!」
「僕のとなり……空いてるよ?」
「ん……いっしょに、寝る?」
「ランドウェラ君も、いっしょに入るのっ!」
仲間の想いと差し伸べられた葉月の手がランドウェラの方へ向けられる。
ランドウェラは透き通った視線で仲間を見つめ、しばしその光景を眺めた。永遠とも思われる一瞬のひと時に彼は隠しきれない笑顔を漏らすと、勢いよくかまくらの中へ飛び込んだ。
「ああ——今夜は宴だ!!」
*SS担当者:牡丹雪NM