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柊 沙夜のやむむによるおまけイラスト
柊 沙夜のやむむによるおまけイラスト
イラストSS
神居神楽にしんしんと雪が降る。
屋根につもった綿布団はすっかり厚い。
温かな蜜柑色の灯を燈した格子戸からは温めた米酒や煮立つ鍋の薫煙が線香のように棚引いている。
黒い輪郭を保った木造建築が並ぶ通りに人の気配はなく、漏れ出る人の声もどこか遠い。
屋内から出てきた賑わいは、降りしきる香らずの白い花がみんな食べてしまうようだった。
「好い夜やねぇ」
うち、好きやわぁ。
声には出さず柊 沙夜(p3p009052)は若緑の瞳を緩めた。音の無い雪夜を歩く市女笠の乙女は、鈴音の微笑みを零しながら雪景色へと溶けていく。
「しゃいねんなはと」
まだ言い慣れぬ言の葉を飴玉のようにころんと口の中で転がせば、風を含んだ白布がふわりと舞った。
ほつりと長い睫毛が見上げた先には白い雪。夏菅の笠に守られた唇に冷たい六花が触れる事は無く、代わりに白霧の吐息が宵闇に溶けた。
楽しや、楽し。雪遊び。
一面に広がる魅惑の新雪を前にトントンクルリ。独楽のような戯れも、綿雪の化粧がすぐに隠してしまって残らない。
兎や、兎。何見てはねる?
そぞろ神との雪景漫歩。
沙夜は遊ぶ。どこまでも、どこまでも。
*SS担当者:駒米NM