イラストSS

●微笑む冬のストレニア
　シャンシャンシャンと鳴る鈴の音。きらきら輝くパールやオーナメントに、それを反射する光の玉。季節を彩る花や樹が、ジェックを祝福していた。
　言葉は不要、白い睫毛と桃色の瞳が、レースの中央できゅんと誰をも惑わす。――いいや、ジェックにそんな気は更々無い。ただ静かな夜を、煌びやかに過ごしたいだけ。
　シダーローズがくすくす笑う、「ジェック、僕達がいるよ」。ポインセチアが柔らかく咲む、「ジェック、貴女に祝福を」。結われたリボンがしっとりと謳う、「ジェック、今日は特別素敵」。ヒイラギは打って変わって厳しく「浮かれすぎないように」だなんて。
　それらを全部受け流し、ジェックは夢を見る。誰もがシャイネンナハトの夜に、乾杯したりプレゼントを準備したりと忙しい。でも、ジェックはそんな世界とは対極にいる。ゆったりと和やかな時間が過ぎていくのが心地よい。
　――噫、こういう日もありじゃん。
　寒空の下、澄み渡った空気を思い切り吸い込んで……白く長い息を吐く。ガスマスクはもういらない。こんな世界も、環境も、知らなかった頃には戻れない。しかし、永遠に刻まれた名によって、故郷を忘れることはないだろう――。


　＊SS担当者：まなづる牡丹NM