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暖かそうなお坊ちゃま
暖かそうなお坊ちゃま
イラストSS
しんしんと。
しんしんと。
音もなく降るそれは、只々真白く。
音もなく降るそれは、只々冷たく。
寝ころべばひやりと耳や、足が冷える。けれどすぐにそんな感覚は麻痺してよくわからなくなった。
瞳に映るのは薄曇り。影のように枝を伸ばす木。そして空から落ちてくる小さな、小さな氷の結晶。すぐに壊れてしまう儚きもの。
ずっと、ずっと、そうしていて。不意にリオーレは身を起こした。同時にばさ、と自分の体から積もっていた雪が零れ落ちる。上半身は動かしたからある程度払えたものの、下半身は未だ薄らと雪が積もったまま。ここまで来た時に出来た足跡も、少しずつ雪が積もって消えていくようだ。
あまりにも無音の世界は時間の感覚など鈍らせてしまう。けれどどうしてかまだ動く気にはなれなくて、リオーレは再び寝転んだ。
(吸い込まれそう)
瞳に映る薄曇りは遠い筈なのに、何故か近いようにさえ感じてしまう。手を伸ばせば届くのではないか――本当は届かないと分かっているのに、リオーレは手を空へ向かって伸ばした。
指に触れる雪の結晶。雨降る空は『泣いている様だ』なんていうけれど、雪降る空の心は分からない。触れて溶けた雪の心も、また。
*SS担当者:愁GM