イラストSS

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『メリークリスマス！』

カチン、と三つのグラスが交わる。
ユーリエ、エリザベート、セリカの三人はカットケーキを持ちながら、乾杯をした。
それぞれが赤と白のクリスマスらしい個性溢れるドレスを身に纏っており、最初はその話題で華を咲かせる。

「あ、エリザベートさん、そのワンピースドレスすごく可愛いですね！」
「本当なのです？　それは、ありがとうございます」
　
　無口で気だるげ、感情が見えにくいエリザベートだが、この時はほんの少しだけ表情が柔らかくなっていた。
　温和で人の感情に鋭いユーリエは、それを感じ取ってほっとしていた。
　
　一方、セリカはそんな二人を眺めながら、心の中でどきどきと緊張していた。

（二人にプレゼント、いつのタイミングで渡せば良いのかな……？）

　照れ屋で心配性なセリカは入念に準備はしてきたものの、肝心なタイミングを伺っている途中だった。

（早くても驚かれるだろうし、でも遅くなったら遅くなったで渡しづらくなるだろうし）

　ううん、と密やかに頭を悩ませるセリカ。
　表面上では笑顔で会話を見守っているが、実はパーティが始まった時からこんな感じだったりする。

「セリカさん」
「ふぇ！？　な、何でしょうか……？」

　不意に話し掛けられ、肩をびくんと跳ね上げるセリカ。
　彼女に話し掛けてきたのは、ユーリエだ。
　恐る恐る返事をするセリカに、ユーリエは小首を傾げる。

「どうかした？」
「い、いえ。何も……」

　明らかに挙動不審なセリカに、エリザベートもさすがに怪訝そうな表情を浮かべる。

「その後ろに隠しているのは、何なんです？」
「えっ」

　エリザベートはセリカの左手の行方を指摘する。
　的確すぎる彼女の問いにセリカは冷や汗を流し始める。

「あの、えっと……これは、ですね」
「え、なになに？　セリカさん、何を隠してるのー？」

　ユーリエもセリカが気になる様子で、二人の視線はセリカの後ろに隠された左手に注がれる。

「うう…………っ！」

　セリカはこんな事ならさっさと渡しておけば良かった、と少し後悔をする。
けれど、こんなにも二人が自分に注目してくれるのは、嬉しかったりもする。

「じ、実は……」

　セリカは観念して、二人に小物の入ったプレゼントをそっと差し出す。

「……これは？」
「二人への、プレゼントです。メ、メリークリスマス！」

　どうか貰って下さい、とセリカは目を瞑り、精一杯の自分の気持ちを差し出す。
　すると、ユーリエとエリザベートは二人で目を見合わせクス、と優しく微笑んだ。

「もちろん、ありがたく頂くのです」
「うんうん！　こんな素敵なプレゼント、貰わないはずないよ！」

　二人は嬉しそうにプレゼントを受け取る。
　その二人の優しく可憐な笑顔が、何より自分へのクリスマスプレゼントになったとセリカは密やかに喜んだ。


　＊SS担当者：悠空(yuku)NM