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善と悪を敷く 天鍵の 女王の山中みや子によるおまけイラスト
善と悪を敷く 天鍵の 女王の山中みや子によるおまけイラスト
イラストSS
貴女は何時だって狡いお人だから。
「……それで?」
もう一年も前になる。場所は違えども、言葉は同じ。
聖夜なんて気取った夜に、気取った時間に彼女は意図して同じ問いかけを繰り返した。
恐ろしい、あの紅色に捕まれば逃げられないとさえ思えるのだから。
レジーナは彼女の瞳を眺めた。享楽的な、紅の色。鮮やかな薔薇の花よりも尚も、美しく光を帯びた鮮血の。
彼女の問いかけは、言葉と瞳。どちらもが雄弁だ。
「それで?」
「――お、お嬢様……私だって」
カーテンが揺らぐ。月の光が、私たち全てを包み隠してくれるような気がしたから。
ぐ、とカーテンを引き寄せてからレジーナは彼女を見下ろした。
私だって、の続きは彼女にとっての答え。
それで? なんて悪戯めいて狡い貴女にひとつ仕返しをしてやりたかった。
リーゼロッテのシルエットがレジーナと交わる――まるで踊るように、その体を引き寄せて。
屹度月光が全てを包み隠してしまったから。今宵の月だけが二人を見ている。
シルエットが、雄弁に二人の距離を遠ざける。
「ふふ。いけないお人」
囁く声と共に、リーゼロッテの声だけが唯、響いていた。
*SS担当:夏あかねGM