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クリスマス2020(山中みや子絵師様)
クリスマス2020(山中みや子絵師様)
イラストSS
「あら」
「どうしたの? 珠緒さん」
この時期、幻想の街は冬とシャイネンナハトを謳歌する。
街路樹には煌めく光の粒がチョコレーソースのようにたっぷりとかけられ、ホットワインと綿菓子の甘い笑い声に混じって時折冷たい雪花がひらりと舞う。
声をあげた桜咲 珠緒(p3p004426)の瞳には驚きと興味が宿っていた。その視線を辿った藤野 蛍(p3p003861)も目を輝かせる。
「スケートリンクね」
銀霜が舞い踊り、虹色に煌めく銀盤を見た珠緒は頬を染める。
「蛍さん、一緒に滑りませんか?」
「喜んで」
淡雪のような恥じらいを含んだ愛らしい誘いに、蛍の胸も子供のように飛び跳ねる。
蛍に手を引かれ、珠緒は恐る恐る氷上へと足を踏み出した。
桜と藤の紐で結ばれた二足の白い靴が並んで銀月を反射する。空気中に散らばった氷の欠片が光を照らし、まるで宝石の中にいるようだ。
「向こうにも行ってみましょ、ひゃあっ!?」
「蛍さんっ!!」
ステンと腰を落とした蛍に慌てて珠緒は手を伸ばした。
「ええと、久しぶりすぎて、滑り方を忘れちゃったみたい」
ぱちくりとした瞬きの後に訪れた笑い声。
重なった手の温もりに微笑んだ優しい花達は、彩られた聖夜を踊る。
――輝かんばかりのこの夜を、二人で。
*SS担当者:駒米NM