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【シャイネンナハト2020】聖夜の前日譚
【シャイネンナハト2020】聖夜の前日譚
イラストSS
街は冬の装いに包まれ、人々は祝祭の雰囲気に気もそぞろだ。だから彼等は、空を駆けるひとつの影に気付く余裕はなかった。
「っ、痛……なんだこれ、プレゼント箱?」
頭上から唐突に降ってきた掌大の箱を見た男は、怪訝な顔をして空を見上げた。澄んだ空は星明かり。
「聖夜、贈、祝……」
そんな夜を、シャノは飛び回っていた。鞄には箱詰めされたプレゼント。極力人に当たらぬよう、しかし誰かの目につくように降らせる。これがまた難しい。けれど彼はそうやってプレゼントを配ることにやり甲斐を感じていた。誰に求められたわけでもなく、自分のやりたいように施す。
「……星?」
そんな中、彼は鞄の底に隠れていた『それ』を引っ張り出した。その拍子にいくつかプレゼントは転がり落ちるが、もとより配るつもりだったので問題ない。
なんだろう、と思う前に彼は用途を理解した。視界の端には、未だ頂点に星を戴かぬ樅の木がある。
翼を震わせ木へと向かう彼の表情には、ゆるく孤が描いている。
(街、木、喜……)
きっと人々は、本来の姿となった樅の木に喝采を上げるに違いない。
そんな人々を見れることが、今の彼には何より、喜ばしい筈だ。
*SS担当者:ふみのGM