イラストSS

　年の瀬を間近に控え、人々はせわしなく往来する刻。
　数千人は軽く収容出来そうな、大きな大きなコンサートホールでは、クリスマス恒例のクラシックコンサートが開かれていた。
　コンサートホールの観客席は、満員の超盛況。
　そして観客達の期待と共に、クリスマスの定番となったクラシックの曲が演奏されていく。
　様々な表情を魅せるクラシックの名曲が、交響楽団の演奏に乗せて、更に魅力的に奏でられる。
　そして、満を持して……ステージの真ん中に立つは、ジオドリク。
　他の楽団の者達は、その場を離れ、ステージの上には彼一人。
　礼服に蝶ネクタイというフォーマルな服装に身を包んだ彼。
　拍手喝采の後、一時の静寂……それを切り裂く様に。
「……♪」
　パワフルかつ、重低音の歌声をホールの中へマイクを通さずとも響かせる。
　そんなソリストとして歌う彼の周りには、まるで凍気の様な煙が舞い……彼を包み込む。
　その声量に心を揺さぶられ、、感動して涙を流す観客も多数。
　そんな観客達の泣き、喜ぶ姿は正しく、この曲にふさわしい。
　舞台上から観客の涙を目にしたジオドリクは更に強く、更に感情を歌声に込めて歌う。
　その歌声は、ホールの中に余すところ無く届けられ……全身全霊の歌は、拍手に包まれた。


　＊SS担当者：緋月燕GM