イラストSS

　アイゼルネはその日……シャイネン・ナハト当日も、遅くまで依頼をこなしていた。
　争いの起きない日でも、依頼の無い日はないもので。彼女は如何なる内容であれ、表情一つかえずに依頼を遂行する……の、だが。
「おかえりなさい～っ！」
「ユミィ、起きていたんですか？」
　隠れ家に帰った彼女を待っていたのは、元孤児のお手伝い（自称）のユミィ。そして、奥の方から漂ってくる暖かな食事の匂いだ。
　遅い時間まで待っていた彼女に、アイゼルネの表情が驚きに転じた。そう、滅多に変わらないはずの表情に変化が見られたのだ。
「遅くまでお疲れ様っ、一緒にご飯食べよう！」
　ユミィは驚くアイゼルネの手を引いて食卓へと連れて行く。見れば、食事のみならず飾り付けまでされており、彼女が如何に今夜を楽しみにしていたかが窺える。
（こんなに遅い時間まで、準備をして待ってくれるなんて……ユミィは本当に優しい子ですね）
　思えば、アイゼルネはシャイネン・ナハトをそれほど重要視していなかった。1人が当たり前の彼女に、誰かを慮る必要などなかったから。
　でも今はユミィがいる。先程まで元気に出迎え、今は電池が切れたようにもたれかかって寝息を立てている少女の髪を、アイゼルネは微笑みながら指で梳いた。


　＊SS担当者：ふみのGM