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12時過ぎの魔法
12時過ぎの魔法
イラストSS
ふわふわと、風花が舞うその塔の時計の周囲が彼らの待ち合わせ場所。
マイペースと呼ばれる普段の自分からは想像できない。一足先にやってきた彼は適当な場所に腰を下ろしてふぅ、と息を吐いてそんなことを考えていた。
待ち合わせ場所の下では道行く人たちの往来がどこか普段よりも早いように見える。
きっと浮かれているんだろう。彼らも、自分も。
じゃなかったらこの、胸の高鳴りはきっと嘘だ。
「あっれー、リヴの方が早いなんてめっずらしー」
天から降ってくるその声は、待ち人のそれで。口元が緩むのを自覚したらそれを止める事なんてできなくて。
「うん……ちょっと、がんばってみた」
「すごーい! 頑張った子にはゴホービあげなきゃじゃんね」
彼女の手が彼の頭へ伸びる。
細く、柔らかな手が髪を梳くように撫でれば、何とも言えない感覚が心の中を占めてむず痒い気持ちになった。
「リネ」
「んー? なーに?」
呼びかければ答えてくれる。楽しい事も、悲しい事も。いつも共にいてくれた大切な人。
「輝かんばかりのこの夜に」
今年も一緒に過ごせてうれしいよ。
「輝かんばかりのこの夜に」
来年も一緒に過ごそうね。
彼女たちの間に言葉は多くは要らない。
そんなシャイネンナハトの夜だった。
*SS担当者:樹志岐NM