イラストSS

　――ミッドナイトブルーの空にアメジストのカーテンが彩るの。

　そんな美しい場所へ往こうとシャイネンナハトの夜に暖かな衣服を纏って鉄帝の夜へと訪れた。
「寒くないかしら？」
「ええ。其れよりも空が楽しみなの。ウィスタリアを見ることが出来るでしょう？」
　ジルーシャはそうね、とアンバーを細めて笑った。傍らの色彩の魔女は極彩色を見詰めることを心待ちにしているようで。
　オーキッドの夜の帳を摺り抜ければ、広がる雪景色に空のカーテンがふわりと揺れる。
「まあ！」
　見て頂戴とプルーを手招けば「綺麗だわ」と幸福を囁く唇が音を乗せて。
　それ以上言葉はいらない。
　有り触れた幸せよりも、尚遠く。個々でしか見られないそんな景色を輝かんばかりのシャイネンナハトに見れた幸福に。
「この夜は忘れられない物になるわね」
「ええ、ええ。ウィスタリアにアメジストが混ざり合う。エメラルドが溶け合ったこの空をシャイネンナハトの祝福が包むのよ」
　戯けたような彼女の言葉にジルーシャはくすりと小さく笑みを浮かべた。
　
　――輝かんばかりのこの夜に。

　その光の祝福あれと願う様に。唯、冬空を眺めて。


　＊SS担当者：夏あかねGM