イラストSS

　さて、これは独白である――

　幻想王国の国王フォルデルマン三世の近衛騎士は彼の幼馴染みが務めているらしい。花の騎士とも渾名される美しい美貌の騎士、シャルロッテ・ド・レーヌの事が虚は気になっていた。
　幾度か顔を合わせる度に「堅物女」「皺が増えるぞ」「狂暴だ」と揶揄うような言葉を発しているが、可憐な彼女の忠誠心と揺るぎない信念を見る度に戸惑いを覚える事もある。
　こんな夜だ。シャイネンナハトなど戦とは無縁。誰もが平穏に過ごしているはずだ。
　誰もが神に祈り、己の叶いたいことを願い、そして幸福に過ごすこの夜もシャルロッテは王の為に身を粉にしているのだろう。
　その事を彼女は悲観することもない。
　その事を誰も気に止める事は無い。
　凜と剣を握りしめ、王の盾として、王の剣として。
　そう振る舞う彼女は神に祈ることはなく、唯一人の男のために膝を折る。

　……天使は、其れをどう受け止めるべきであろうか。

「下らない」
　呟いては見たが、それでも脳裏からはその姿が消えることはなかった。
「下らない――どうせ、」
　どうせ、彼女は神にも天使にも祈ることはないのだから。


　　＊SS担当者：夏あかねGM