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あなたが憶えてくれている証
あなたが憶えてくれている証
イラストSS
――ねえ、知っている? 冬ってね、雪が降るの。
はらはら、って散って。花弁みたいで、とってもきれいなのよ。其れを、一緒に見られたら――
墓石を前にしてシルキィはふと、彼女の言葉を思い出した。柔らかな声音は愛情を孕んで、友情を湛えた笑顔は幼い子供のようだった。甘えた声音は、甘え方も知らない彼女の唯一の自己表現。
冬を共に過ごせないことを彼女は知っていたくせに――そうやって、彼女は約束を重ねるのだ。
――ねえ、シルキィ。もしも、また会えたら次は知らない国に行きましょう?
――ねえ、シルキィ。わたし、恋がしてみたかったの。あなたが恋をしたら教えてくれる? こっそりとね。
――ねえ、シルキィ。わたしね、本当はセイラの事、ちょっぴり嫌いだったのよ。お母さんみたいだったんだもの。
……けどね、そのちょっぴりの嫌いを越えて、本当に大好きだったの。わたしのこと、嫌いになっちゃったかな?
まるで、年頃の少女のように、呟いた彼女の言葉を一つ一つ、思い出す。
ミロワール、と呼ぶのは憚られた。彼女の本来の名を、『シャルロットちゃん』と、呼ぶ度に苦い気持ちが湧き上がる。
「話したいことが沢山あるよ。雪が降ったよ。沢山、色んな国に行ったんだぁ。
……また、お話に来るね。今日はシャイネンナハトだから。シャルロットちゃんにもプレゼント」
そう、と置いたのは白い白い彼岸花。貴女が手にした黒い花に混じるようにその色彩を重ね合わせて。その花言葉は――――
*SS担当者:夏あかねGM