イラストSS

　――公約！　『なんでもします！』
　そんな安請け合いをしたエルス・ティーネの元には無数の案が届けられたのだった……。

　公約の事なんてまるで忘れたシャイネン・ナハトの数日前。
　準備に忙しなく走り回るエルス・ティーネは彼をまだシャイネン・ナハトに誘えずに居る。
　そんなことばかりを悶々と考えてからはや数週間……イルナスに頼まれたお遣いの報告書を手にして、執務室に入ったは良いが――
「ディルク様？」
　彼が居ない。
　テーブルに書類は置いておけば良いだろうかと周囲を見回しているエルスの気は漫ろ。頭の中は『彼』の誘い方ばかり。

「と、ととと……！？」

　何かに躓いた。
　しまった！と思ったのも束の間に。何か柔らかな感触が身を包み込む。
「ひゃあっ？！」
「よぉ、降ってるとは思ってなかったが」
　ソファーに寝そべっていた彼の上に運良く転んで怪我はない。ない、けれど。
「あっ、も、申し訳っ、」
　近い、と言えば揶揄うように笑うから。こんなの慣れましたと言わんばかりに胸を張れば。
「へえ？」と獰猛な獣が獲物を見付けたように嬉しそうに笑ったのは……屹度、気のせいではないのだ。




　＊SS担当：夏あかね