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リディアちゃん4さい
リディアちゃん4さい
イラストSS
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祈るための夜だ。
デコラティブな装束は魔導戦に有効だろうが、四肢がむき出しで祈りが修業のように錯覚させるだろう。素足に触れる白い毛並みのくまのぬいぐるみが、せめて幾ばくかの暖かさをもたらすことを祈らざるを得ない。
少女――リディアの表情は静謐だ。伏せたまつ毛の上にも、髪にも腕にもマントにもうっすらと雪が降り積もっていく。
10才のリディアを襲った凶事。
旅行中、地の利のない場所での戦闘。目標を娘を逃がすことに全力を尽くす覚悟せざるを得ないほど魔物は強かった。
幼い少女の足などすぐすくむ。有無を言わさずその場から退避させるため、リディアの母は溺死のリスクと魔物に食われるリスクを天秤にかけ、娘を川に突き飛ばした。
逃げおおせ溺れもせず、リディアは16歳になり、今年も祈っている。両親の冥福ではなく、彼らの無事と再会を。母は賭けに勝ったことを今も知らずにいるのだから。
祈るための夜だ。
森に育まれ、森を守ろうとしている少女の祈りを大木が受け止めている。夢を探求する夜と闇と月の民に名を連ねた少女に、今宵祈りの果てに良き夢の訪れんことを。
*SS担当者:田奈アガサGM