イラストSS

　暖炉に火を灯しましょう。
　蝋燭も火を灯しましょう。
　部屋を飾りつけましょう。
　ごちそうを並べましょう。
　最後に部屋の灯りを消したなら――ここはささやかなシャイネン・ナハト（クリスマス）を祝う場に。

　窓辺に置いたキャンドルが窓を照らし、その向こう側で静かに降る雪をも照らし出す。覗いてみれば更に向こう側では街の灯りが見えるのだろうけれど、わざわざ見ようとも思わない。
　暖炉の上にも置いたキャンドルの光でリースと靴下がぼんやり見える。ツリーなどというものはない。それを言うなればテーブルの上にある食事だって、今夜売り切らねばと息巻いた商売人たちが『特売！』と値引きして人々が群がっていたところからゲットした骨付きチキンとケーキのみ。しかもケーキなんてホールケーキではなくてカットケーキだ。
　質素だと思う。質素だと思わざるを得ない。しかも一緒に祝ってくれる者もいない。それでも――生き残って勝ち取った結果には限りないのだ。
（これが混沌初めてのクリスマスだなんて……）
　しかもこの世界にはサンタクロースはいないらしい。この夜はプレゼントがもらえる夜ではないということだ。代わりに輝かんばかりのこの夜に願いを込めるのだそうだが、今この瞬間願いたい事なんて決まっている。

　――嗚呼。せめて来年は良いことがありますように。


　＊SS担当者：愁GM