イラストSS

●彼、騙されたんだってよ

ㅤ寒空の広がる12月の夜。

ㅤしかし室内はその限りでは無い。

ㅤ暖かく薄暗い部屋、いくつかのカメラのみが覗き込む異様な空間。
ㅤ赤いリボンに縛り付けられ、ビリヤード台に寝そべるのはプラック・クラケーンその人だった。

●
ㅤ固く冷たい感触が肩口に伝わる。

ㅤ背中を浮かせたのは冷たいからじゃない。指示されたからだ。
ㅤ普段の力が出せないのはなんのせいか。きっとシャイネンナハトの奇跡がそうさせたのだろう。

ㅤもう少し背中を上げて、もっと体のラインを強調するように、と声がかかる。

ㅤもはやそれに従うしかない。さっさと終わらせてしまおう。

ㅤ逸らした腹が艶めかしく照らされ、胸元のリースがチクチクと刺さる。それがどうにももどかしくて、腰をくねらせた。

ㅤプラックの目じりには屈辱の涙が浮かび、それが余計に扇情的な儚さを醸し出している。
ㅤ男の勲章たる顔のキズは今夜ばかりは見られない。それはまさに失った誇りの象徴である。

ㅤシャッター音。なんどもなんども繰り返されるそれに思わず目を瞑る。

ㅤおっ、それいいねぇという言葉を耳に押し込み、落ちる涙を流れるままに受け入れた。

ㅤ──ああ、なんでこんな事に。

ㅤ絞るような声は、誰にも届くことはなく。



　＊SS担当者：七草大葉NM