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壊レ行ク魂
壊レ行ク魂
イラストSS
歩く。ただ、歩く。
周りは世間とは無縁な程何もなく、あるのは自らの纏う炎と灰だけ。
何かを明確に覚えているわけではなかった。
何をしに此処に来たのかも、何を求めて歩いているのかも。
ただ、一つだけ明確にわかる事があった。
「……何も覚えていないのに、どうしてこんなに空虚なのかしら」
少女はぽつりと口にする。事実、何かが抜け落ちたような感覚があるのだ。
それが一体何なのか。記憶か、それとももっと違う"何か"か。
埋まらない心のピースを探すように、少女はまた歩く。
ふと、視線の端に薄っすらと白く色を残す一角に気付く。
恐らく雪だろう。今日という聖夜は、どうやら雪の降る美しい日となったらしい。
ぐらりと、頭が揺らぐ。何故此処に居るのか、その雪は、この場所は。
ああ、ああ、何か一つでも思い出せる事が出来たなら。
空から落ちる白いひとひらの雪。少女は徐にその雪を捕まえてみようと手を差し出す。
しかし触れるかどうかという直前で、結晶は小さな音を立ててそのまま消えてしまった。
「……私は、」
一体どこに、何を置いてきてしまったのだろう。
*SS担当者:月見里あとりNM