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イラスト詳細

異国漁村縁結譚

作者 桃山シュヴァリエ
人物 カイト・シャルラハ
イラスト種別 三周年記念SS(サイズアップ)
納品日 2020年11月15日

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イラストSS

ここはカムイグラの地の上空。カイトはこの場所にて鷹の姿で自由に飛びまわっていたのだが……

「だから! 俺は鶏肉じゃねーぞ!」

 巨大な鳥の姿をした妖に追われ、ピンチな状況にあった。なお、鳥人形態のカイトなら倒せる程度の敵であったが、今は鷹の姿で戦闘力も減ったためそうはいかない。そうして、敵の攻撃をよけながら逃げ回っていると……

「鷹よ! そこをどけ!」

 前方から羽の生えた人物が現れた。カイトはその人物が刀を持っていることや、上からな感じのものいいからカムイグラの精霊種なのではと判断したうえで妖の前からどいた。すると、その人物は刀を抜いて勢いそのままに一閃。妖の片翼が身体と離れた。その隙にカイトは鳥人の姿に戻り、妖に炎狩を打ち込んで焼き尽くした。
「む、妖が急に焼け焦げた? それに先ほどの鷹がいなくなって代わりに鳥人が……なるほど、そういうことか」
 ここでカイトはしまったと思った。というのも、ここで攻撃せずに逃げていればあの精霊種に目をつけられずにすんでいたかもしれないのだ。そして、結果助けた人物はカイトに近づいていき……
「やはりな。お前もおれと同じスカイウェザーというわけか」
 ……どうやら、カイトの読みとは違って彼は同じスカイウェザーのようだった。

「ふむ、噂には聞いていたが絶望の青はようやく踏破されたみたいだな。よかったよかった」
「ああ、滅海竜や冠位魔種まで出たときはかなり焦ったが、なんとか踏破できたぜ。それに、今じゃそこの一部は俺の領地だしな」
 カイトは自身を助けた人物、シグルと空を飛びながら雑談をしていた。話して分かったこととしては、このシグルという人物はハヤブサのスカイウェザーで、元は海洋王国の軍人の一人だったが、当時のライバルであったディープシーの軍人と共に神隠しの被害にあい、このカムイグラに流れ着いたという。その後とある漁村にて拾われた彼らは協力して漁村を盛り上げ、ついでに海洋王国のやり方も一部取り入れたりしながら、発展させているという。そして、シグルはカイトをその漁村に連れて行こうというのであった。
「ところでカイトよ。お前は自分の父親のことは知っているか?」
「まあな。親父がただの漁師じゃなくて軍人だってことぐらいは知っているが、それがどうしたんだ?」
「実はおれたちはあの人に稽古をつけてもらっていたことがあってな。その時は一度も勝てなかったが、この新天地で新たな戦闘術を身に着けた今ならもっといい戦闘ができるかもしれないと思っている。だが、村にはもうちょうどいい訓練相手がいなくてな……そこでお前に模擬戦をしてもらいたいんだが、頼めるか?」
 この申し出を聞き、カイトはしばらく考えた後こう言った。
「へえ、それなら戦いの後にうまい魚を食われてくれるっていうなら協力してやってもいいぜ」
「安心しろ。村の近くでとれる魚はうまいし、いくらでも食べさせてやる」
 こうしてカイトはシグルが住んでいる漁村に行くこととなった。


 カイトとシグルが漁村の前に着くと、そこにはディープシーの男とゼノポルタの老人が立っていた。
「シグル、いい訓練相手は見つかったのか?」
「ああ、ニグル。空を飛んでいたらちょうど見つかってな。カイト、こいつが俺と共に神隠しにあったディープシーのニグルだ」
「アンタが神隠しのもう一人の被害者か。俺はカイト、鷹の飛行種だ。よろしくな」
「オレはニグルだ。太刀魚の海種で、元はシグルと同じく海洋王国の軍人をしていた」
 こうして海洋王国出身の三人が自己紹介を終えると、ゼノポルタの老人も近づいてきた。
「おやおや、同郷の方々と会えて話したいのも分かりますが、まずは村に来ていただかないとですな」
「おお、そうですな。ではカイト、そろそろ村に入ろうか」
「申し遅れましたが、わしはこの村の村長です。カイト様、よくおいでなさいました」
 こうしてカイトはカムイグラのはずれにある小さな漁村に足を踏み入れたのであった。

 漁村に入ってカイトは、遠く離れた地でありながらも故郷のような懐かしさを感じた。
「もともとこの村は他に比べれば活気があったほうだったのですが、このお二人が来て海洋王国のやり方なども取り入れたことでさらに発展しており、村の者たちは彼らに感謝しております」
 どうやら、シグルとニグルがこの村にかかわったことで活気が付き、また海洋のやり方も取り入れたことで懐かしいような雰囲気も混ざったのだろう。ここでシグルも話に入ってくる。
「だが、海洋のやり方をそのまま持ってくるのも難しくてな……なにせ俺たちとこの村の住人では種族なんかも違うし、村の気候も海洋とは違う。だから最初はかなり失敗していたんだが、村長や村の有識者らが手を貸してくれて、何とか形になってきたのが今の段階というわけだ」
 カイトがこの村のことについてある程度分かってきたところで四人は訓練場でもある、村長の家の近くの広場に着いた。

 今広場にいるのはカイト、シグル、ニグル村長の四人だけだ。ほかの住人は仕事中だったりするのようだ。
「ではお三方、準備はよろしいですな?」
 村長が三人に最後の確認をする。
「ああ、いつでも構わないぜ」
 カイトは三叉蒼槍を持ち、軽く振ってから答えた。
「こっちもいつからでも構わない」
「おなじくだ」
 シグルは刀を鞘に納めたまま構えて、ニグルは二振りの刀を構えて答えた。
「では、どちらも準備はよさそうだな……では始め!」

「いやぁ、いい戦いだったぜ。それにしてもこの魚うまいな!」
 模擬戦の訓練を終えて、四人は村でとれた魚を食べながら反省会を行っていた。
「どれもこの村でとれた魚だから、そういってもらえると嬉しい。それでも、空中戦に持ち込んだのはどうかと思っているのだが……」
 シグルは魚を食べながらカイトに模擬戦での不満を言っていた。
「確かにな。飛行できるカイトとシグルならまだしも、おれは空を飛べないからな」
 二人の言い分にカイトは反論する。
「とはいえ、相手はどういうのが来るのかわかんねぇし、空中戦での戦闘手段があるといいってことが分かった分いいだろ?」
「カイト殿は調子がいいですな。っと、そろそろ日も暮れていきました。どうですか、今日のところは村に泊まって明日旅立たれるのも……」
「ありがとうな、村長さん。それじゃあ、お言葉に甘えさせてもう少しこの村にいることにさせてもらうぜ」
「なら、オレたちが神隠しにあった後の……大号令の結果などから聞かせてくれないか?」
「ああ、お安い御用だぜ。そっちもカムイグラに着いた後の話を聞かせてくれよ」
 こうして、三人の海洋の男たちはそれぞれの冒険や苦労を夜遅くまで語り続けていった。そして翌日、村の漁の手伝いをした後カイトは海洋王国に戻り自信の領地のほうによったのだが、そこには島を埋め尽くす(´・ω・`)の姿が……

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