イラストSS

　外に出るなり冷たい風が吹きつけてきて、シャルティエは思わず目を閉じた。
　いつの間に降ってきたのだろう。
　空から落ちる白い雪が、風に運ばれてシャルティエの頬で溶ける。

　ホワイトクリスマス。
　そう思いかけたのを、すぐに打ち消した。この世界にはクリスマスはない。あるのはシャイネン・ナハトだ。
　どこの世界でも、こんな寒い時期には心温まる行事が生まれるのだろうか。

　違う、けど、似ている。
　似ている、けど、違う。
　だからこそ、思い出してしまう。

「メリー・クリスマス」
　シャルティエは大切なものを懐かしむ口調でそうつぶやいた。そして、
「――輝かんばかりの、この夜に！」
　大切な今への喜びをこめた口調で空に向けて言った。

　仮宿にしている宿屋で、これから小さなパーティが始まる。数日前から準備をしている様子を断片的に見てきて、期待はどんどん膨らんでいる。
　きっと楽しい日になるに違いない。

　日は暮れかけて、街灯にあかりがともるころ。
　シャルティエの足は自然と駆けるスピードになる。
　巻きつけた臙脂のマフラーが弾む。
　白い息が弾む。
　今日はシャイネン・ナハト。楽しいパーティの日。

※担当GM『月舘 ゆき乃』