イラストSS

　シャイネン・ナハトの夜。
　おとぎ話がほんとうか嘘かは分からない。けれど楽しむには真偽のほどは関係ない。この夜を、この時を、味わい尽くせばそれでいい。

　輝くシャンデリアの下、ドレスの色彩が翻る。
　生演奏にあわせてステップを踏む紳士淑女たち。
　ぐるりと置かれたテーブルには山海の美味が並び、メイドがにっこりとグラスを差し出す。

　そんなパーティのざわめきの中、ゼフィラは泳ぐように動いて、人々との会話に興じた。社交界において人脈は築くべき財産だ。
　黒いキャミソールタイプのドレスの上に透ける羽織りものを重ね、髪は後ろで１つに纏めている。髪に飾った花から垂れるラベンダー色の細いリボンが、纏めた髪をくるくると止めているが、癖のある金髪はなおも華やかに波打つ。
　普段のゼフィラしか知らない人が見れば驚くだろうが、これもまたゼフィラに馴染んだ姿だ。

　ワイングラスを片手にバルコニーに出れば、陽が落ちてからかなり経っているのにも関わらず、外は明るく見えた。
　間断なく落ちてくる雪の白が、浮かぶ大きな月の光が、空を闇から隔てている。
　その風景も、パーティに劣らず輝かしい。
「黎明院様？」
　呼びかけられてゼフィラは振り返る。
　雪の夜を背景にグラスを掲げ、楽しげな笑みを浮かべたその光景はまさに、一幅の絵画だった。

※担当GM『月舘 ゆき乃』