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日向 葵の甘奈による2人ピンナップクリスマス2019(横)
日向 葵の甘奈による2人ピンナップクリスマス2019(横)
イラストSS
「こっちですよ、葵さん!」
「あー分かったっスから、そんな引っ張るな」
小神野 陽花に手を取られて通りに出ると、凍りつくような風が吹いていた。
いったい、どこへ連れて行くつもりなのか……。
モミの木を持った家族づれやカップルが、声を弾ませ、顔を輝かせて、二人の横を通り過ぎていった。
そうか。今夜は――。
「シャイネン・ナハトっスか」
葵は独り言のように弦いた。
生まれ故郷にも似たようなイベントはあるが、まさか異世界でやることになるとは。
(「でも、こういうイベントは恋人同士で過ごすものっスよね。ふつう」)
陽花から再三アプローチされているが、葵にとって陽花は妹のような存在だ。二人の関係に温かさを感じているものの、そこには甘やかさや切なさ……いまのところ、恋心は存在していない。いまのところは。
「どうしたの、葵さん。ぼーっとして?」
目をのぞき込まれただけで、裸をさらしたような錯覚にとらわれたのは、さっきまでの考え事のせいだろうか。
なんでもない、とゆるく笑う。
「……ならいいですけど。着きましたよ。ここ、葵さんと二人できたかったんです」
葵は顔をあげた。
夜に沈む白と黒のタイルの広場をぐるり、星が瞬くようなイルミネーションのきらめきが取り巻く。まるで夢の世界に迷い込んだかのようだ。
「わー、雪が降ってきましたよ。すごい、すごい」
はしゃぐ陽花を微笑ましく思いながら、葵は雪片が濡れ跡を残しながら消えていくのをぼんやり目で追った。
雪が次第に景色を白に変える魔法のような時間。
来年は一緒にいるのだろう?
※担当『そうすけ』